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= まぶい分析学 Mabui Analysis =

「まぶい」とは琉球語で「たましい」という意味です。琉球語は古代大和語と深い関連があることが分っています。したがって、琉球語で語られる精神世界は、古代大和から連綿と続く日本人の精神世界を表し、いわば、日本人の心の源流であると考えられます。このような日本文化と西洋諸心理学を融合、体系化することが出来、これを「まぶい分析学」と呼んでいます。まぶい分析学の命名は、姫路獨協大・實川幹朗教授によります。記して感謝。 まぶい分析学と精神分析や分析心理などの他の心理学との違いは、分析と同時に治療法が提示されること、家族療法として主婦が修得すると家族成員に対しても効果を発揮することです。なお、http://matayan.ti-da.net/ にミラーサイトを準備しています。  
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平成11年9月22日 第31回沖縄県公衆衛生学会・メルパルクおきなわ
2008年1月19日(土) HPより転載
2008年(平成20年)3月23日(日):旧ブログより転載

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メリーランド大学アジア校/家族療法研究所
又 吉 正 治
名古屋大学経済学部社会思想史研究室
鈴 木 英 朗

はじめに
「イチャレー・ムル・チョーデー(一度会えば皆同胞)」の格言から知られるように1、沖縄の人間関係の特徴として、強く相互に依存し合う(相互に甘え合 う)ことが多々見られる。ギャンブル、アルコール依存症、不安神経症等を患う配偶者に対して献身的に世話をし(甘えてくる配偶者を甘えさせる)、やがては 相手から依存されることに依存するようになり、精も根も尽き果ててしまった事例が多々見られる。この様な共依存が起こると、何度も何度も同じことを繰り返 してしまうのが特徴である。本研究では共依存を解決する新しい方法を検討する。



共依存に見られる特徴
共依存の関係にある夫婦や親子を子細に観察すると、著者が扱った事例に見られる限りにおいては、次のような特徴が存在する。

(1) 世話をする側が女性(母・妻)である。
(2) 同じことが何度も繰り返されて進歩がない。

第一については米国でも同様のようで、米国のソーシャル・ワーカーは「愛しすぎる女達」と名付けているi。第二はいわゆる「甘やかし」の状態とも考えられ るもので、どう尽くしても人格の昂揚が見られず、どろどろな関係に陥っている。なぜこの様になってしまうのか、ということを先ず検討する。

なぜ女性(妻・母)か?
子育てを「子の心に生じた不快感を取り除き快感に変える一連の作業」と定義し、これを「子育ての本質」と呼ぶii。我々の文化では子育ての本質は「母」に よって実践される。すると、半年も経過する頃になると、不快感、母、快感、の要素の間に条件反射が形成され(条件母性反射と定義する)、「人見知り」が発 現する。以後、子は、性別の区別無く、母に甘えるようになる。この傾向は成人後も同じで、子が母に甘えるのと同様、夫は妻に甘える。妻はといえば、条件母 性反射は彼女の母親(女性)に対して成立しているので、夫に対しては、夫が妻に甘えるほどには、甘えることができない。家族精神力動にはこの様な不平等性 が存在するが、この不平等性こそが共依存に見られる特徴の一つを説明するものと考えられる。
同じことが何度も繰り返される(甘やかし)

例えば、子供の「あれ買って、これ買って!」という要求に無思慮に応じていくと、やがて要求が次第に大きくなり、関係が悪化する。いわゆる「甘やかし」の 状態である。「甘やかし」なるものの本態についての研究はこれまで全くなされていなかったが、次の様に考えることが可能であるii。

人の「甘え」は、ここでは「依存」として良いが、マズローの基本的欲求iiiの発現に基づく行動と考えられる。すなわち人は先ず生理的欲求に基づいて甘 え、それが充足されると自然に安全欲求に基づいて甘える様になり、それが充足されると所属・愛情欲求に基づいて甘えるようになり、といった具合に、さらに は、承認欲求、自己実現欲求に基づいた甘えの行動を呈する。この様に考えるならば、「人は甘えることによって(甘えさせてもらうことによって)成長する」 と考えて良いiv。

実際の家庭生活にあっては、共働き、夫婦の不仲といったことが原因となって、子の安全欲求、所属・愛情欲求、承認欲求といったものを充足させることができ ない場合が多い。ここで仮に、生理的欲求(食欲、排泄欲、睡眠欲など)に基づく甘えは充足されたが、親が共働き・不仲であるため、安全欲求に基づく甘えが 充足されなかった場合を考える。安全欲求に基づく甘えがどうしても充足されない場合、子は他者の行動を模倣することによって、下位の生理的欲求に基づく甘 えの行動を取る(退行)か、上位の所属・愛情欲求あるいは承認欲求に基づく行動を取る(越行2)ようになる。これを図示すると次のようになる

(図がうまく表示できません。すみません)


自己実現欲求
代理欲求
承認欲求       Substituted Needs


所属・愛情欲求


安全欲求


生理的欲求


図 拡張階層欲求


ここで、マズローの五段階の階層欲求に、新しく「代理欲求substituted needs」の概念が導入され、それが退行または越行の形で現れることを示している。基本的欲求を下位から順次充足すれば人間的成長が見られるが、代理欲 求を充足させたのでは、代理欲求が発生している現基本的欲求が充足されない限り、人間的成長が見られず、欲求が固着化・肥大化する。ここで、基本的欲求を 下位から順次に充足させていくことを「甘えさせる」と定義し、代理欲求を充足させることを「甘やかし」と定義する。共依存の関係にある二者は、代理欲求の みを求め、あるいは充足しあっている関係にある。


共依存からの脱却
通常では、あるいは、これまでは、共依存状態からの脱却には、例えば夫婦であれば、「離婚」が代表的な方法である。7月16日に那覇女性センターで行われ た共依存講座の講師を務めた家族機能研究所(東京)のセラピスト氏もこの道を選択されたi。しかし、「関係を絶つ」ことだけが共依存からの脱却になるので はないことは、これまでの議論から明らかであろう。共依存の関係にある二者には、子細に観察すれば明らかであるが、相手に対する「愛情」が間違いなく潜ん でいる。これを「共依存は自分の心の穴をふさぐために見せかけの愛を利用した人間関係」と否定的に定義するiのは誤りであると言える。それは単に、当事者 が人間の心理的特性を知らないために陥っている苦境なのである。

本研究で示したように、共依存は「甘やかし」の状態にある人間関係である。従って、代理欲求の源泉となっている未充足の基本的欲求を同定し(生育歴の分 析)、それを充足させるように働きかける、換言すれば「甘やかす」のではなく「正しく甘えさせる」ことが重要である。あるいは「正しく共依存する」とも表 現されよう。


おわりに
以上、土居の「甘え」論とマズローの基本的欲求論を組み合わせて拡張し、共依存に関する新見解を提出した。家族療法の臨床では、特に沖縄ではと思われる が、この共依存の問題は深刻である。差し当たっての臨床事例としては文献vを充てる。今までに得られた事例は、今後可能な限り、暫時発表していく予定であ る。


参考文献
1 本土では「旅は道連れ世は情け、渡る世間に鬼はなし」、西洋では「神は自ら助くる者を助く」が対応するであろう。
2 英語のregressionを意味する「退行」は頻繁に用いられるが、progressionを意味する語はこれまで定義されておらず、「ませる」「大人びる」といった形で表現されるのが普通であった。これを著者は「越行」と定義するv。

i 破綻招く“見せかけの愛情”・共依存講座、琉球新報平成11年7月22日夕刊。
ii 又吉正治:正しい「甘え」が心を癒やす、文芸社、東京、平成10年。
iii Maslow, A.(上田訳):人間の完成、誠心書房、東京、昭和60年。
iv 鈴木英朗:「甘え」の原理的検討を―学びたい沖縄の祖先崇拝文化―琉球新報平成11年6月25日朝刊論壇。
v又吉正治:勤労意欲が無く金銭浪費癖のある青年の心理治療―マズロー・土居理論の組み合わせと拡張―、第27回九州臨床心理学会沖縄大会、平成11年1月29日~30日、パシフィックホテル沖縄、那覇市。
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1947/08/09
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自己紹介:
◎工学士(静岡大学、電気工学、昭和45年)
◎医学博士(東京大学、医用生体工学、昭和55年)
◎荻野恒一慶応大学客員教授に文化精神医学・精神分析を師事・共著:沖縄のシャーマニズム(祖先崇拝)に見る家族療法の機能、理想、628号。
◎臨床心理士(平成2年登録、なお、この肩書きを維持することへの疑問を感じたので、平成7年には再登録を停止した)

〒904-8799
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日本文化の心理学と家族療法研究会
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