「いまどきの若者は!」という人たちに意見を聞いてみると、共通して見えてくるのが、「今の若者は甘やかされている」という認識である。これは、われわれ もそうだし、われわれの上の世代も同様である。何ゆえに、年配から若者を見ると、「甘やかされている!」というようになってしまうのだろうか。
われわれの親の世代(現在75歳前後以上)、われわれ(50歳前後)、われわれから見た若い世代(25歳前後)の三世代で考えてみよう。
この三世代で異なる点は、物質的な豊かさが全く異なるということだろう。「欲しい!」と思うようなものの数がぜんぜん異なるのである。子供が「欲しい!」という気持ちになるとき、現代に近くなればなるほど、多くのものがその対象となる。
ということは、子供が親に「甘える」という機会が次第に多くなっているということである。しかし、親が子供を甘えさせるというのには限度がある。いうなれ ば、時代が下れば下るほど、物質的に豊かになればなるほど、甘えたくても甘えられない子供達が多くなるということである。
甘えたくても甘えられないという状態では、すね、僻み、恨み、不貞腐れ、自棄糞の心意が発生するものだ。
つまり、われわれの親の世代はわれわれを見て、何かにつけて、すね、僻み、恨み、不貞腐れ、自棄糞の心意が表出するにつけ、「いまどきの若者は!」という 気持ちになると考えられる。同様に、われわれもまた、われわれの子供世代を見て、「いまどきの若者は!」ということになるわけなのだ。
なるほど、世代を超えて年配が若者を見て「いまどきの若者は!」と感じてしまうのは、甘える対象は増加しているのに、甘えさせてもらえることが少ないから であると!このことは、ウィスコンシン大学のハーロー教授が赤毛サルを使った実験で、親に甘えさせてもらってないものは、自分が親になった時に自分の子を 甘えさせることができない、という機制が働くことを示している。
親が親に甘えた分しか自分の子を甘えさせ切れないのであれば、甘えの対象が増加していく中では、「いまどきの若者は!」と感じてしまうのは、わりかし普遍的な現象であるのかもしれない。
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