人間は「甘える」ことで成長していく動物だ。「甘える」とは他者に依存することである。これを日常的なセンスで表現すれば、「自分でできないことではない が他者に頼むこと」とできる。人間関係の中では「甘えるな!自分でやれ!」と言いたくなるようなことが数多くあるものだ。種々の問題は、この「甘える」そ して「甘えさせる」ということがうまくいかないことから発生するのだ。
甘えたくても甘えられない状況におかれると人間には、すね、ひがみ、うらみ、ふてくされ、やけくそになる心意が発生する。種々の問題行動や心身症、神経症 には、これらの心意が隠れているものなのだ。 この「甘える」という行為には五種類がある。五種類の「甘え」は階層化されており、下位を充足させると次位 が「自然に」発現するという性質を有する(拡張マズロー論、Maslow―Matayoshi's Theory)。
ある段階の「甘え」が充足されないとき(例えば両親の不仲や不在など)、子供は、他者の行動を真似て甘えるようになる。自分よりも年齢が低い子の真似をす るときは「退行」と呼ばれる。逆に年齢の高い子や大人の行動を真似するとき、これを「越行」と定義する。「越行」は年齢にそぐわず大人びた行動を示す「良 い子」として周りの目には映る。
退行がひどい子は周りから問題児としての認識を受けることはたやすい。しかし越行がひどい子はそうではないので、周りは安心してしまう。ここに問題が発覚 しにくい点があるのだ。退行を越行も根は同じであり、子供は寂しさを我慢している状態なのだ。この我慢はいつまでもできるものではない。ここに周りの大人 が気付くべきことがある。キレてからでは遅いのだ。つまりサインを出してからでは遅いというべきなのだ。
少子化に伴い、子供は、大人の真似をせざるを得ない状況にあるといってよい。大人びた良い子ほど、特に親や周りの人たちが気をつけて見守るべき対象なのだ。現実には、周りの人達は安心して放っておくことが多く、これでは、子供にとってはますます悪循環になってしまうのだ。
子供を健全に育てるには、親や社会の愛情を健全に与える必要があると言える。しかし、親や周りの人にこの知識が学校教育で与えられていない現状においては、この点を何とかしない限り、事件はまた起こると考えてよい。
以上のことは、新報カルチャーセンターで行われている「人間関係と家庭経営の心理学」で検査法も含めて知ることができる。インターネットでも講座の受講は可能である。
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