ところで、少子化の先端を行く東京都の例を見てみよう。東京都二三区は〇、九八である。しかし、都区内別に見てみると、江戸川区の出生率は一、三七で第一位である。なぜ江戸川区の出生率は高いのだろうか。
今年四月の「Yomiuri Weekly」の「働く女性を支援、子育てしやすい町ランク」特集によると次のようである。主として保育の充実度という観点から、延長保育の充実している 品川区が高く評価された。ちなみに品川区の出生率は〇、九二である(二三区中一三位)。逆に江戸川区は、同区のホームページの「赤ちゃんは保護者の深い愛 情と責任のもとで、肌を接しながら育てられるのが理想です」という記事が引用され、「その『理想』を表すように、同区のゼロ歳児保育実施率は二三区の中で 一番低い」と指摘され、「江戸川区から脱出組続々」という見出しの元に、「江戸川区は多くの保育移民を他の区に送り出している」と批判された。
またランキングの中の延長保育充実度ランキング第三位・ゼロ歳児保育充実度ランキング第二位で、子育て支援は充実しているはずの目黒区は、なんと出生率は二三区中二二位、つまり、下から二番目の〇、七六である。
これらの数字から見る限りにおいては、子育て支援策としての延長保育、ゼロ歳児保育は、少子化対策とは無縁のようにみえる。
では江戸川区はどうなっているのだろうか。江戸川区に住む知人によると次のようである。
江戸川区の子育て支援の特徴は、先にも述べたように、家庭保育を重視していることだという。ゼロ歳保育のニーズに対して江戸川区は「保育ママ制度」を推進した。子育て経験のある主婦が自宅で子供を預かることで、家庭的な保育を実現し、三十余年の歴史があるそうだ。
ゼロ歳保育を実施すると、区立保育所で乳児一人当たり四十万円弱が必要になるようだ。しかし同区では、育児助成として乳児一人当たり月一万―一万三千円の 乳児養育手当を支給し、さらに私立幼稚園の費用を区立幼稚園とほぼ同じに設定するよう補助金を出したりして、若い子育て世帯が経済的にもゆとりを持って子 育てができる環境を提供しているというのである。
沖縄県において今後子育て支援策を考える場合、江戸川区の試みも十二分に参考にされてしかるべきではないだろうか。
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