ついでにもうひとつトートーメー問題を続けてみます。ネット検索に、東京善センター講座録18、『家』意識と『墓』の継承というタイトルの、花園大学の古橋エツコ氏の講演録がありました。
これは、沖縄の事情を少し述べておりますが、どこから引用してきた結果なのか分りませんけれども、間違ったことを述べています。こういう形でどんどん広まっていくことに危惧を覚えてしまいます。
以下は、臨済宗妙心寺派、東京禅センターの講演録No.18からの引用です。第9節のみが関連していますので、そこだけの引用となります。
9 お墓の継承と慣習
慣習という面では、日本の沖縄の例をあげます。沖縄では、位牌(トートーメ)の相続について、男系の男子相続
が原則でした。
その通りです。
もし娘しかいない場合は、養子を迎えて承継、その場合でも父方の男兄弟の子を養子とするとされています。
ここが間違っています。娘達だけしかいないときは、『預かり』として継承します。
そして、その娘に次男ができたときには『授かり』として次男が継承します。
しかも慣習によって位牌の継承者は、その家の全財産を相続することになっていました。つまり、旧民法の祭祀継承と祭祀財産をあわせた家督相続と同様の内容が、慣習として続いていました。
そうです。しかし、ここで大きな誤解があります。継承した財産を私物化するのではなく、
同胞達に何かあったときのための管理を任されていると考える必要があることです。
しかも女性が位牌を継承すると、たたりがあるなどと宗教的な規範がユタ(占い師)によって流布されたので、この慣習が続いたのです。
女性が継承すると祟りがある、というのは、一見すれば摩訶不思議といえますが、
研究の結果、迷信ではないことが分っています。それは、(1)嫁入り前の娘が
継ぐと嫁に行きにくくなる、(2)嫁入り後の娘が継ぐと家庭が壊れる可能性がある、
ということです。また、ユタによって流布されたものとは考えられません。ユタは
祖先祭祀システム、祖先崇拝の論理のおかげによって、救われた人です。
文化であり、したがって、ある意味、一般の人の常識でもあることなのです。
今から25年前、この慣習に対する不服を家庭裁判所に訴えた例があります。家庭裁判所は、女性でも相続できる旨の審判を下しました。それ以来、女性でも位牌やお墓を継承できるようになったのです。
家庭裁判所以前から、女性は、上に述べたように、『預かり』として継承していました。
問題は全くないのです。ところが、そういうことを知らず、個人的な欲の問題の次元で考える
と、そういうことがいわれ始めて、日頃付き合いの無い親族が急に自分達が継承するという
形になりました。今で言う、親族間に見られる詐欺といっても良い現象ということです。
またお墓については、墓碑の文字そのものを書かないという例があります。ではどうするかというと、お墓に入る人が好きだった
言葉であるとか、オブジェであるとか、ゴルフ好きの方でしたら、ゴルフスイングをしている像であるとか、色々な自分たちの気持ちを表したものを墓碑に託し ている場合が見受けられます。お墓に「~の墓」と文字が無いため、今まで述べたお墓の名前の問題も関係なくなります。寺院でも、姓の異なる承継者でも認め るところが増えております。
墓は、以前はそういう名称を与えなくとも、別に何の支障はありませんでした。
寺院が認めるのは、管理費用の問題だけであると思われます。仏教と祖先崇拝では、
考え方が異なっておりますので、祖先崇拝の沖縄で仏教の教えが通用すものではありません。
仏教が通用するのは葬儀のときだけといって過言で無いでしょう。
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