2008年(平成20年)2月6日(水)旧ブログより転載
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特に難治性の疾患の場合には、種々の怪しげな民間療法などが横行して医学側を困らせることがある。アトピー性皮膚炎も例外ではないようだ。また沖縄には医 者半分ユタ半分というよく知られた諺がある。これは、病気は身体的な面と精神的な面の両面からアプローチすることがよい、という意味である。アトピー性皮 膚炎も、どうやらこの類のようだ。
第十九回日本家族研究・家族療法学会において、アトピー性皮膚炎と家庭内暴力を伴う事例が紹介された。三年間もかかりはしたものの、アトピー性皮膚炎まで完治したことは、精神的な側面からのアプローチもきわめて重要であることを示すものだと言える。
ここで心理的側面を考えてみよう。その痒みのため、「何とかして欲しい!」と願いはするものの、誰もそれに対処できないという状況になっている。これは日 本(文化の)心理学でいうところの「甘え」の構造に関連するものだ。甘え論の元祖である土居健郎によれば、「甘え」は「依存欲求」であるが、拡張された甘 え論では、「自分でやってできないことではないけれども、敢えて他者の手を煩わせること」と定義している。アトピー性皮膚炎の場合、何とかして欲しい!と いう気持ちの元に、他者(母親)の手を煩わせたい(甘えたい)のであるが、それが充足されないのである。
この様に、アトピー性皮膚炎には、強い甘えの心理が発生することが特徴のようだ。私が知る事例は全てがそうであるし、先に紹介した学会発表での事例もそう であった。つまり、医学的対処の傍ら、「甘え」に対する心理学的対処もきわめて重要であると言うことになるわけだ。「甘え」に対処するということは、甘や かすことなく正しく甘えさせることである。
「甘え」の感情はマズロー心理学にいう基本的欲求に関連する。基本的欲求とは、それが無ければ病気になる、それを取り戻せば病気が治るといった性質を持つ ものだ。沖縄でいう「マブイ」の性質に似ているところが面白い。基本的欲求には五種類(段階)あり、下位の欲求を充足させれば、自然に上位の欲求へ移行す るという性質がある。しかし、上位の欲求へ移行しない(精神的な成長がない)ものもあり、この見分けが大切だ。
上位の欲求へ自然に移行しない(見かけの)基本的欲求を充足させようとしても、それは底無し沼のようなもので、甘えを吸い取る一方でしかない。これは「甘やかし」の状態だ。この状態になると、自体は全く改善し無いどころか、悪化してしまう。
アトピーに限らず、甘え」の心理は他の日常生活でも重要だ。これは琉球新報カルチャーセンターの講座(日本文化の心理学と家族療法)、あるいはインターネットによる講座でも学ぶことができる。
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