2008年03月17日13時49分
中国チベット自治区ラサの騒乱について、自治区のシャンパプンツォク主席が17日午前、騒乱後初の記者会見を開き、騒乱による死者が13人に上ったと述べた。いずれも暴徒による殺害や火事による焼死などで、治安部隊による犠牲者はなかったとし、武力弾圧の事実を全面否定した。
中国チベット自治区ラサで16日、道路を占拠する装甲車両=ロイター |
同主席はデモ隊の制圧は武装警察と公安(警察)が行っており、軍は加わっていないと強調。「治安部隊は発砲しておらず、戦車など人を殺害する武器は一切使っていない」と述べた。重傷者6人を含む61人の警察官が負傷したという。
新華社通信によると、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が中国政府を批判したことに対し、自治区高官は16日、「全くナンセンスな発言で、僧侶と住民は完全な信教の自由を享受している」と反論。ラサ市のドジェ・ツェジュグ市長も「分裂主義者の妨害さえなければ、チベットは歴史上最高の発展期にある」と述べた。政府機関や学校は17日から平常通りに再開するという。
また、新華社は16日、事件後初めて「ダライ(・ラマ14世)集団の社会破壊活動は必ず失敗する」との論評を発表、「表面上はチベット独立を放棄したと言っているが、実際は分裂破壊活動をやめていない」と批判した。
ダライ・ラマ14世が「北京五輪が開かれる08年は、チベット人にとって重要かつ最後のチャンスになる」「五輪期間中にデモ活動を行い、要求を訴えるべきだ」と発言していることを取り上げ、チベット問題と五輪を絡めていると指摘。暴力行為を先導しているのは間違いないと断じた。
一方、インドに拠点を置く非政府組織(NGO)チベット人権民主化センターのウェブサイトによると、チベット人が多く住む四川省のアバ県での治安部隊との衝突による死者は計15人に達した。遺体は僧院に運び込まれ、20代半ばの元僧侶も含まれているという。
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■米、政策変更促す声明
中国チベット自治区ラサでの僧侶や市民らによる抗議行動に端を発した治安部隊との衝突をめぐり、ライス米国務長官は15日、中国政府にチベット政策の方向性を変えることなどを促す緊急声明を出した。
ライス長官は「宗教、文化、生活面で影響を与え、緊張を生んできたチベット分野での政策に取り組むよう中国政府に求める」とし、政策修正が必要との考えを示した。
長官は中国政府に「平和的な意思表示を理由に拘束されている僧侶らを釈放するよう求める」とし、また「暴力が拡大の傾向にある」と懸念を表明。「暴力に訴えないよう双方に強く呼びかける」とチベット人側にも冷静な行動を呼びかけた。
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■「直接対話を」 独首相求める
中国チベット自治区の騒乱をめぐり、メルケル独首相は15日、政府報道官を通じ「チベット問題を解決するには平和的な直接対話しかない」と、中国政府とダライ・ラマ14世との直接対話を呼びかけた。
また、シュタインマイヤー独外相が16日、楊潔チー(ヤン・チエチー)外相と約1時間にわたり電話会談。「最大限の透明性を確保して、事態を収束させて欲しい」との見解を伝えた。